連載 田中角栄 予告編
かつて田中角栄という政治家がいた。
最終学歴は小学校卒。総理大臣にまでのぼりつめた。
裸一貫からの叩きあげ。
作家・石原慎太郎が角栄をテーマにして『天才』という本をだした。けっこう売れているらしい。
この本がきっかけになったのかどうかわからないが、角栄にかんするたくさんの本が書店にならべられるようになった。
昭和という時代、戦後日本を象徴する人物として角栄をあげるひとは少なくない。
角栄の政治はカネにまみれていたし、そのことが政治家生命をうばうことにもなった。
1974年10月。月刊誌『文藝春秋』は11月号に二本の記事をのせる。
立花隆「田中角栄研究 その金脈と人脈」と児玉隆也「淋しき越山会の女王」である。
一方はカネをあばき、一方はオンナをあばいた。
1974年11月26日。首相の座にあった角栄は辞意を表明する。在任期間は二年五ヶ月だった。
約一年後、こんどはロッキード事件という未曾有の汚職事件がおこり、角栄は逮捕、刑事被告人となる。
今なお日本人の心にのこっている、田中角栄というのはいかなる人物で、どういう足跡をのこしたのか。
今回の連載では、それをささやかながら描き出してみたい。
なお、今回の連載の内容の大部分は早野透著『田中角栄 戦後日本の悲しき自画像』(中公新書)に負った。
ここに謝意を表する。